■胃潰瘍
<症状>
- 健康な胃は、胃液の中の粘液(胃粘液)によって保護されているので、まず心配はありませんが、精神的なストレスなどが原因で、胃粘膜が弱くなってしまうことがあります。そこに胃液の成分である塩酸やペプシンが胃壁をとかして、潰瘍(ただれ)ができてしまう病気を胃潰瘍といいます。
- 痛みは人によって様々ですが、胃(みぞおちのあたり)の痛みや胸やけ・すっぱいゲップ・胃のもたれが主な症状といわれています。
- 食事中や食後に痛みを感じる方もいますが、食事と関係なく夜間に痛むこともあります。
- 空腹になると痛む方もいます。
- その他として、背中の痛み・口臭・むかつき・嘔吐さらに症状が悪化すると、吐血(黒褐色の血)や黒色便がみられることもあります。
<種類>
- 急性胃潰瘍
- 症状が急速に進みます。
- 精神的なストレスやアルコールの飲み過ぎなどが原因となって、突発的に起こります。
- 急性のものは、比較的早く(数週間くらい)で治癒します。
- 慢性潰瘍
- 胃(みぞおちのあたり)の痛みや胸やけなどの症状が、慢性的に続きます。
- 慢性胃潰瘍はピロリ菌の感染が原因になっています。
- 潰瘍が、粘膜内でおさまっているとよいのですが、筋層までおかしてしまうと治りにくくなります。
- 粘膜内の胃潰瘍
- 胃潰瘍のうちで粘膜筋板まで至っていない様な浅い潰瘍です。適切な処置をとると2~3日でもとにもどります。なぜなら、胃粘膜は新陳代謝によって2~3日でもとにもどるためです。
- 潰瘍が浅い場合、びらんともいいます。
- 潰瘍が粘膜筋板をつらぬいて、粘膜下層までおよぶと治ったあとも、瘢痕が残ってしまいます。
- 老人性潰瘍
- 胃酸分泌を伴わず胃体部に好発する高位潰瘍です。これは加齢と共に胃体部の粘膜が萎縮し、幽門部との境界が上方に移動することで起こるものです。
<原因>
- ストレス・過労・不安・緊張・イライラなど
- こういった精神的・肉体的ストレスは、自律神経のバランスが崩れてしまい、胃粘膜を覆う特殊な粘液がうまく分泌されなくなってしまうため、急性胃潰瘍の原因になります。
- ヘリコバクター・ピロリ菌の感染
- ヘリコバクター・ピロリ菌とは、胃粘膜に感染する、らせん状の細菌です。
- ピロリ菌に感染した人のすべてが慢性胃潰瘍になるわけではありませんが、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍にかかる人は、ピロリ菌に感染している率が高いことがわかっています。
- ピロリ菌に感染するとまず、すべての人が慢性胃炎となります。
- 胃潰瘍の原因の7割以上がピロリ菌とされており、十二指腸潰瘍においては9割を占めています。
- ピロリ菌は、口から入って感染すると言われています。
- ピロリ菌に感染すると、自覚症状として、むかつきや胃の不快感などが起こりますが、1週間ほどで治まり、その後は何の症状もないので、気づかない場合がほとんどです。
- 刺激の強い香辛料
- 刺激の強い香辛料など、胃を刺激するものを過剰摂取すると胃潰瘍の原因となります。
- 解熱消炎鎮痛薬や降圧剤・ステロイドなどを長期で服用している場合
- 胃腸の粘膜を荒らしてしまう副作用があり、胃酸過多な状態となって、胃潰瘍の起きる原因になることもあります。
- 喫煙・飲酒・コーヒー
- 喫煙は胃粘膜の血流を低下させるため胃潰瘍の原因となることがあります。
- 大量の飲酒やコーヒーは胃に負担がかかります。
- 暴飲暴食・暴飲暴食や不規則な食生活は胃に負担がかかります。
<検査>
- レントゲン検査(X線検査)
- 胃潰瘍の大きさや潰瘍の周りの粘膜、胃壁などの様子を観察します。バリウムを服用後、体の向きをいろいろと変えて撮影します。
- 胃カメラ(内視鏡検査)
- 潰瘍の状態を胃カメラを使って観察し、ピロリ菌の有無、病気の程度などを診断します。
- 胃カメラが苦手という方には、吐き気をほとんど感じることのない、鼻から行う内視鏡検査がある病院もあります。
- ピロリ菌を見つける検査には、内視鏡を使わない方法と、内視鏡を使う方法があります。
- 尿素呼気試験法:内視鏡を使わない方法
- 除菌治療は3種類の薬を1週間内服するだけなので、比較的簡単です。除菌治療終了時から1か月程度間隔をあけて、「尿素呼気試験」を受けていただき、除菌の正否を確認するのが一般的です。
- 尿素呼気試験は、まず空腹時の呼気(息)を検査の袋に入れ、試験薬(ユービット錠)を内服して頂きます。その後、5分間左側を下にして横になり、5分経ったら15分間座って頂きます。最後に息(呼気)を、もう1つ検査の袋に集めて調べる方法で、病院では、一般的にこの方法が行われ、最も精度の高い診断法です。
- 抗体法:内視鏡を使わない方法
- 血液や尿などを用いて、その抗体を測定する方法です。
- 抗原法:内視鏡を使わない方法
- 糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。
- 内視鏡検査では、胃炎や潰瘍などの病気があるかどうかを直接観察して調べますが、それと同時に、胃粘膜を少し採取しそれを使って検査する方法です。培養法・迅速ウレアーゼ法・組織鏡検法があります。
<食事療法>
- 食事は、できるだけ毎日規則正しく取りましょう。
- 1回に食べる量を、腹6分目から8分目位と少なくしましょう。 お腹いっぱいに食べる事は、胃に負担が掛かるので良くありません。
- 空腹の状態を続けない様にしましょう。空腹を続けると胃酸によって胃の壁が消化され、潰瘍はますます悪化します。
- 食後は食休みをとるようにしましょう。胃の消化作業をスムーズにする為で、仕事をしながらの食事は良くありません。
- 前回、胃潰瘍の原因でお話しましたが、喫煙・飲酒・コーヒーは胃に負担がかかる為控えましょう。
- その他、自分にあったストレス解消法を見つけ、ゆっくり休むことが大切です。
<薬物療法>
- H2(エッチツウ)プロッカー
- 胃のH2レセプターにヒスタミンが反応すると、胃酸が分泌されます。そこで胃のH2レセプターにヒスタミンが結合するのを妨害する物質が考えられました。これがH2ブロッカーという胃酸分泌抑制剤です。
- H2ブロッカーは、現在胃潰瘍治療薬としてメインに使用されています。
- H2ブロッカーには、最初のタガメットに始まり、ガスター、ザンタック、アルタット等の多くの薬剤が開発されています。また、最近ではPPI(プロトンポンプ阻害剤)というH2プロッカーよりもっと制酸機能の強い薬剤も発売され早くかつ高い治癒率をもたらしています。
- PPI(プロトンポンプ阻害剤)
- プロトンポンプ阻害薬は、最強の胃酸分泌阻害薬ですが、使用できるのは胃潰瘍で8週、十二指腸潰瘍6週までしか使用できません。それ以上の期間の使用は危険とされています。
- 運動機能改善薬
- 胃の運動機能が低下している場合、胃の活動を高めるための薬で、胃もたれなどの症状がある場合に用いられます。
- 胃粘膜保護剤
- 制酸剤の他に、胃粘膜の血流をよくする目的で「胃粘膜保護剤」などを併用することもあります。
- 胃潰瘍は一般的に、薬剤によって6~8週間で治癒します。しかし、薬を飲み続けて、治ったと自己判断で服薬を止めてしまうと再発の原因となりますので、医師の指示に従って服薬してください。
<外科的治療>
- 外科的治療は、薬物療法に反応しない人、内科的治療を行っても出血が止まらない場合など、症状が重いときに行われます。
- 具体的には、開腹手術や腹腔鏡手術が行われます。
- 腹腔鏡手術では、腹部に開けた孔から、腹腔鏡(腹腔内を観察するための内視鏡)と手術器具を挿入し、胃の内部を観察しながら治療します。開腹手術では、迷走神経切断術(胃の中の胃酸の生産をコントロールしている迷走神経の切断)または部分的胃切除術が行われます。
<ピロリ菌に対する治療>
- 現在、胃潰瘍再発の主たる原因がピロリ菌感染であることが判明し、胃酸を抑えるだけの治療は対症療法であると考えられています。
- ピロリ菌が陽性の場合には、時期を見て、除菌療法を行い、再発の防止に努めます。
